「このまま客先常駐を続けていても、スキルが広く浅くなるだけな気がする」——そう感じてこのページを開いた方に向けて書きました。SESから自社開発への転職は、準備次第で現実的な選択肢です。
エージェント利用経験のある運営者ittiが、公的データと体験談をもとに解説します。
この記事で分かることは3つです。
- SESと自社開発で年収・働き方が実際にどう変わるか
- 転職できる人・できない人の現実的な見極め方
- ポートフォリオからエージェント選びまでの具体的な手順
成功談だけに偏らず、下がるリスクも含めてフラットに整理します。
SESと自社開発、3つの本質的な違い
「自社開発に行けばスキルが深まる」とよく聞きますよね。ただ、構造の違いを曖昧に理解したまま転職すると、思っていた環境とのミスマッチが起きます。まず全体像を整理します。
構造の違い:3つのポイント
- 指示系統:SESは客先が指揮、自社開発は自社PdM・上司が指揮
- 技術スタック:SESは客先依存で広く浅く、自社開発はチームで選定・継続利用
- キャリア:SESは現場ごとにリセット、自社開発は同一プロダクトで深掘り
誰の指示で動くか——指示系統の違い
SESでは、雇用元(自社)と就業先(客先)が別会社です。日々の指示は客先リーダーから受けます。評価・昇給は雇用元が決定します。「誰のために何を作っているのか」が見えにくい構造です。
自社開発では雇用元と就業先が同一です。プロダクトへの貢献が直接評価に反映されます。指示系統がシンプルになることで、意思決定の速度も上がります。
技術スタックの自由度と継続性
SESは客先ごとに使う技術が変わります。広く浅い経験が積まれる一方、1つの技術を深掘りする機会は少ない。加えて、SESには一次請け・二次請け・三次請けという商流があります。下位の商流になるほど還元率が低くなる傾向があります(業界各社データ 2024年:高還元SESは還元率80〜90%以上、低還元は50%以下)。
自社開発では言語・フレームワーク・インフラを自社チームで選定します。継続的に同じ技術に触れるため、深さが出やすい。ただし「選定の意思決定責任も自分たちが持つ」ということでもあります。
キャリアパスが見えにくい理由
現場が変わるたびにキャリアが断絶します。「3年経っても何が専門か言い切れない」という悩みはここから来ています。
社会人4年目でSESから自社開発へ転職した方の体験談(Qiita・2024年)では、「SES時代は広く浅くのスキルで、得意分野を言い切れない悔しさがあった。転職後は同じプロダクトを継続的に触ることで、特定領域を深掘りできている」と書かれていました。
年収はどう変わる?タイムライン別のリアル
「年収が下がるのでは」という不安がありますよね。データと実例を入社直後・3年後・5年後の3段階で整理します。
SES平均 vs 自社開発平均の現状
データを確認します。SESエンジニアの30代平均年収は約408万円 (hlt-inc.jp 2025年集計)。一方、社内SE(開発)の30代平均は620万円 (Geekly自社データ 2024年9月〜2025年8月)。差額は212万円です。
SESのビジネスモデルとして、エンジニアへの還元率は平均約61%(マージン率約39%)というデータがあります(厚生労働省「労働者派遣事業報告書」2024年)。月単価50万円の案件に入っていても、手取りが月16万円・年収270万円という事例も実在します(note・2024年)。
入社直後に年収が下がるケースもある
転職直後は年収が一時的に下がることがあります。理由は「試用期間中の給与設定」や「残業代込みの前職年収」との比較が主な原因です。
Zennの体験談(2024年)では、10社応募・5社内定・2ヶ月の活動で年収350万円→500万円(150万円アップ)を実現しています。ただし、成功者が発信しやすいサバイバーシップバイアスがあります。自分のスキルレベルと応募先の規模を照らし合わせた現実的な想定が必要です。
年収変化を判断する際の注意点
- 体験談の多くは「転職して結果を語れた人」が書いている
- 自分のスキルレベル・希望する企業規模で結果は大きく変わる
- 「転職直後は横ばいか微減・3〜5年後に差が開く」という想定が現実的
なぜ3〜5年後に年収差が広がるのか
SESでは年収の上昇が鈍くなりやすい構造があります。note(2024年)掲載の体験談では、10年間A評価を維持しても年収270万円→312万円にしかならない試算が紹介されていました。
Geeklyのデータでは、社内SE(開発)の40代平均は746万円、50代以降は819万円です。スキルと成果が直接評価に反映されるため、3〜5年のキャリアを積むことで差は200万円以上に拡大する傾向があります。もちろん企業規模や個人のパフォーマンスによって差はありますが、傾向としては明確です。
働き方の変化——メリットと見落としがちな落とし穴
「自社開発は残業が少ない」と思っている方もいますよね。それは半分正解・半分違います。メリットとデメリットを両面から見ます。
通勤先が固定される安心感
SESで感じるストレスの一つが「現場が変わるたびに人間関係がリセットされる」ことです。半年ごとに通勤先が変わり、入場のたびに環境を一から把握する——そういった経験をしてきた方も多いはずです。
自社開発では通勤先が固定されます。チームメンバー・開発環境・コードベースが継続するため、積み上げが活きます。入社から時間が経つほど「自分がこのコードの歴史を知っている」という状態になります。
自社サービスへの当事者意識
「ユーザーが使っているサービスを自分が作っている」という実感は、モチベーションを変えます。note(2024年)の体験談では、転職後について「役員から直接感謝される経験が増えた」と書かれていました。SES時代の「お手伝い感覚」が解消されることで、仕事への向き合い方が変わります。
自社開発ならではのプレッシャー
一方で、デメリットも正直に書きます。自社開発では技術選定・設計の意思決定に参加します。「うまくいかなかったとき、責任が社内で完結する」構造になります。SESのように別現場に移ることで環境をリセットする対処法は使えません。
チームや環境が合わない場合でも、社内で解決するしかない状況が生まれます。「関与度が上がる」ことのプレッシャーは、楽になる側面と表裏一体です。
働き方の変化まとめ
よくなること: 通勤先の固定・チームの継続性・プロダクトへの当事者意識・スキルの深掘り
変わらない・難しくなること: 技術選定への責任・チーム問題は社内解決が必要・成果が直接評価に反映
転職できる人・難しい人の現実的な目安
「SES歴しかなくて採用してもらえるか分からない」という不安ですよね。採用側の視点と、SES経験の活かし方を整理します。
採用側が重視する3つのポイント
自社開発企業が中途採用で見るのは主に3点です。
- 技術の深さ——特定の言語・フレームワークでどこまで深く入れるか(幅より深さ)
- ポートフォリオ——個人開発・OSSコントリビュートなどの成果物
- プロダクト思考——なぜこの設計を選んだかを説明できるか
SES歴では「幅広い現場経験」はアピールできますが、「深さ」が弱い傾向があります。ここを補うのがポートフォリオです。
SESエンジニアが評価される意外な強み
- 複数の業界・規模の現場で即戦力として動いた実績
- 要件定義から保守まで幅広く関わった経験(大規模自社開発では分業が多いため、逆に珍しいスキルセット)
- 異なる技術環境への短期間適応力
年齢・経験年数の現実的な目安
Yahoo!知恵袋(2024年)では、27歳・Java3年・年収400万台のSESエンジニアが転職活動をし、450万〜で複数内定を獲得 したケースが紹介されています。回答者のコメントには「一流企業は難しいが二流企業なら現実的」とありました。
動きやすい層は20代後半〜30代前半かつ実務3〜6年の方です。30代後半以降でも不可能ではありませんが、マネジメント実績やOSS貢献など「深さの証明」が求められます。
40代・50代エンジニアの転職については別記事で詳しく解説しています。
「SES歴しかない」を強みに変える自己PR軸
「SES歴はハンデ」と思われがちですが、見せ方次第で武器になります。「複数の業界・規模の現場でも即戦力として機能した実績」は、大規模一社開発では得られない経験です。要件定義から保守まで経験している場合は明示します。
「広く浅く」という自己評価を、「多様な現場で仕様変化・技術環境の変化に適応してきた」と言語化できれば、書類の印象は変わります。
転職を成功させる具体的ステップ
「何から動けばいいか分からない」、そう感じますよね。準備の順番を整理します。
ポートフォリオを先に仕上げる
転職活動の前にポートフォリオを整えます。書類通過率が大きく変わります。
最低限のラインは「GitHubに自分のリポジトリがあり、READMEで設計の意図を説明できる状態」です。OSSへのコントリビュートがあれば加えます。完成度より「なぜこの設計を選んだか」を言語化できているかが重要です。
個人開発のテーマは、自分が実際に使いたいと思えるものを選ぶと続けやすい。「週に一度機能を追加している」という継続性も採用担当者の目に留まります。
IT特化型エージェントを選ぶべき理由
SESから自社開発への転職では、IT特化型エージェントが有利です。技術スタックを理解した上でアドバイスをもらえるため、総合型エージェントよりも的確なフィードバックを得やすい。
レバテックキャリアは転職成功率96%・3人に2人が年収70万円以上アップ という実績があります(2023年1月〜2024年3月)。Geeklyは言語・フレームワーク・クラウド領域ごとに担当を細分化しており、IT業界に特化した専門知識をもつアドバイザーから具体的なフィードバックを得やすい。
気になる方はまずIT特化型に1〜2社登録して、担当者の技術理解度を比べてみることをおすすめします。
転職エージェントの初回面談で何を聞かれるかはこちらで解説しています。
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求人票に「自社開発」と書いてあっても、実態はSES派遣に近い企業があります。エージェント経由でも直接応募でも、面接・面談時に以下を確認します。
偽自社開発チェックリスト
- 自社プロダクトの名前とユーザー数を担当者が即答できるか(答えられない場合は要注意)
- 開発チームのエンジニア比率が50%以上あるか
- 「SIer・受託も並行している」という回答が出ないか
- GitHubリポジトリやCI/CDの運用状況を確認できるか
- 技術スタックを自社で選定しているか・外部から指定されていないか
エージェント経由なら担当者に「自社プロダクトのみで事業を運営しているか」を事前確認してもらえます。直接応募の場合は面接時に必ず確認します。
内定後の条件交渉を忘れない
年収・技術スタック・在宅勤務の条件は内定前後に交渉できます。エージェント経由の場合、担当者が企業と代行交渉してくれます。「年収は出せる上限を提示してきている」わけではないので、一度は交渉するのが基本です。
ITエンジニアが年収アップを狙う転職術はこちらで解説しています。
まとめ——SES脱出は計画的に動けば現実的
この記事のまとめ
- SESと自社開発の違いの核心は「誰の指示で動き、何のために作るか」
- 年収は入社直後に横ばい〜微減のケースもある。3〜5年で差が200万円以上開く傾向
- ポートフォリオ整備→IT特化エージェント登録→偽自社開発チェック→条件交渉の順で動く
- SES歴は「多様な現場経験」として言語化すれば武器になる
「転職できるか分からない」と感じていても、スキルの棚卸しとポートフォリオを整えてから動けば、選択肢は広がります。まず1社だけでも相談してみると、自分の市場価値が具体的に見えてきます。
焦る必要はありません。ただ、動き出すタイミングは早いほど選択肢が多い。今の「このままでいいのか」という気持ちを、行動に変えるきっかけになれば嬉しいです。